貸借対照表の実態(実態B/S)を把握して、5年後の実態B/Sを描ける経営に徹することで、潰れない会社の「仕組み」を創ることができます。
創業以来の会社の特徴、経営判断の特質、すなわち会社の実態はすべて貸借対照表(B/S)に集約されています。
一般的に、損益計算書(P/L)に関心のある経営者は多いですが、B/Sに関心を示す経営者は少ないです。たいていの経営者は「儲けはいくらか?」「経費はどれだけかかったか?」といった1年間の損得が気になり、真っ先にP/Lに目が向いてしまいます。世の中の景気が悪くなると原則的に売上と利益は減少します。逆に景気が回復すれば、それはすぐ元へ戻ります。P/Lの数値は、このように簡単に変わりやすいものです。
それに対して、B/Sは創業以来の蓄積の結果を表しています。いうなれば、会社の力量、現在有している全体力を示しています。そこには、事業の歴史と経営者の判断が良いも悪いも含めて、すべて凝縮されています。例えば、会社の利益と信用の累計、資金の調達力と調達先、資金の使い道(運用)が、創業から現在までの結果として表されます。
「売上の割には儲からない体質」とか「不測の事態にどの程度の抵抗力があるか」など、会社の実態がB/Sから読み取れます。こういうことは、P/Lだけでは読み取り難いものです。また、P/Lで出る利益が、現金の増加ではありません。P/Lで利益を生むことは重要ですが、その利益を生むためにも、良いB/Sを作る必要があるのです。
利益を出す方法の1つには、売上を伸ばしてコストを下げれば利益を増大できます。では、売上が伸びない中で利益を増やすには、さらにコストを下げる必要がありますが、この場合P/Lだけを見ていても対応ができません。B/Sを数期にわたり分析し、B/Sの資金運用をよく検討して資金調達を適正化するのです。
儲かる事業を伸ばし衰退する事業を捨てる、儲けに貢献しない無駄な固定資産を処分する、設備投資は減価償却費の範囲内で行う、過剰在庫を抑える、支払いと売上回収に1ヶ月間の差をつける、固定費比率をさげて減収しても増益する体勢を築くなど、B/Sの資金運用はスリムで筋肉質となり、B/Sの資金調達も必要最小限になるため、無借金で収益性と健全性の高い財務体質が築けるわけです。
潰れない会社の「仕組み」を創るには、経営者の意思と戦略として未来のB/Sをどう描けるかしだいということです。5年後の目標実態B/Sを作り、それを達成するための経営計画を立てることが必要です。B/Sの体質を良くすることは、会社の体質も強くなり、経営として重要です。P/Lの利益を出し続けてもB/Sが良くないと、社会の評価は上がりません。
実態B/Sが良くなった会社というのは、確実に収益性と健全性の高い経営を続けています。逆に、悪いB/Sのままでは、収益性は改善せずに、足りない現金を借入金で補う経営を続けています。
B/Sを重視することが、つぶれない会社の「仕組み」をつくる定理の始めなのです。